「教育ファーム」は何をめざすのか!

みぎの写真はベジタブルなあんぱんです。
一番上の緑はバジル、真中はクリームチーズ、そしてトマトです。

西川功晃氏による実演です。
パーテイブレッドノアタラシイ魅力
~切り分けて楽しいパンの提案~

今は「個食」の時代ですが、
家族が別々のものを食べるのではなく、このように切り分けて同じものを食べる食の共有感で、家族や仲間たちと仲良くコミュニケーションを取れるというのは、いいなと思いますが。

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(農文協論説委員会)の抜粋です。

「教育ファーム」は何をめざすのか

 こうして各地で取り組まれる「教育ファーム」は何をめざすのか。農文協の思いも含めて整理してみたい。

(1)教育ファームは「食育」の場である。

「食べる」の前に、生命あるものを「育てる」仕事があることを伝えたい。
 人間(ひと)は食べものを育て、その食べものに育てられていることを伝えたい。
 言葉で教え込むのでなく、リアルに体で感じ、気付き、発見させること。そのための「本物体験の場」を提供することが「食育」の本道であろう。

(2)教育ファームは「体験学習」の場である。

 教育ファームは、生産者(農林漁業者)の指導を受けながら、作物を育てるところから食べるところまで、一貫して体験する機会を提供する取り組みである。
 この総合的な体験を通して、自然の力やそれを生かす知恵と工夫を学び、生産の苦労や喜び、食べものの大切さを、実感を持って知る。

(3)教育ファームは「気付き」の場である。

 見る・聞く・触る・嗅ぐ・味わう「五感」フル回転の「体験」を通して、3つのよさに気付かせたい。
〔1〕地域のよさ…人・風土・食文化など
〔2〕自然の力を生かす農業のよさ・面白さ
〔3〕自分のよさや可能性…やりとげた喜び
 この「気付き」が深いほど、意識と行動の変容・成長につながる。

(4)教育ファームは「変容・結びあい」の場である。

 子どもの未来を真ん中におく取り組みで、地域の結びあいを密にし、お互いが変わる。
 子どもが変わり、会話が増えて親(家庭)が変わる。家庭と地域の連携が深まって、地域・学校が変わる。
 体験にかかわる生産者(農家など)も変わる。やりがいが感じられて、暮らしに張り合いが増す。

 そしていま、小学校や中学校に、この教育ファームと志を共にする「追い風」が吹いている。

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応援したい、小中学校の「体験型学習」
 全国の小中学校で、この4月から、これまで以上に「体験型学習」が重視される。文部科学省の「学習指導要領」が改訂され、4月から「移行期」として、どんどん進めなさいという指示が出ているからだ。

◆「生活科」…継続的な飼育・栽培への改訂

 まずは、小学校1~2年生が、小学校入門期に学ぶ「生活科」の指導要領が改訂された。

 もともと「生活科」では、まずは学校になじませ、基本的学習・生活習慣を身につけるねらいで、直接体験を重視した学習活動を行なっている。

 栽培体験ではアサガオの鉢栽培などに取り組む学校が多いが、今度の改訂で、「継続的な飼育、栽培を行なうようにすること」の文言が新たに加えられた。生命に関する教育が重視されて、「生命の尊さを実感を通して学ぶ」観点から、短期的でなく、「継続的」な飼育・栽培体験をやりなさいという指導に変わったのである。

 アサガオだけでなく野菜の栽培もやらせたいし、1年生から2年生まで継続するムギやタマネギの栽培も面白い。そうなると畑の確保や栽培指導の面で、地元の農家や農業関係者の応援が必要になる。

◆「総合学習」…「地域学習」「生産活動」にシフト

 そして、3年生から始まる「総合的な学習の時間」。も「生きる力」を育むねらいで、平成10年の指導要領改訂で創設されたものだが、今回の改訂では、学習活動の内容として、「地域の人々の暮らし、伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題についての学習」が加わった。さらには「ものづくり、生産活動などの体験活動を積極的に取り入れること」にも配慮することが指導されている。

 今回の改訂で、「総合学習」は時間数が週3時間から2時間に削減される。その分、5~6年生で週1時間の「外国語活動」が新設された。「総合学習」の時間は減ったが、「地域学習」「生産活動」にシフトした取り組みが求められるから、ここでも地域に根ざした「教育ファーム」活動へ、農家・農業関係者の応援が歓迎されることになるだろう。

◆「栄養教諭」の地域連携型食育の推進

 さらなる「追い風」は、この四月から「学校給食法」が改定・施行されること。この改定のなかで、栄養教諭が中核となり学校・家庭・地域が連携して食育を推進すること、そのためにも「地場産給食」を推進すること、つまり、食材の地域自給と農業体験・食文化学習を結ぶことが求められているのである。今年4月からさらに増員される「栄養教諭」の応援も、農家・農業関係者の大事な課題である。

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「生物育成」で困っている中学校「技術科」の先生
 実は、今回の学習指導要領の改訂で、農家・農業関係者の立場から一番注目したいのは、中学校の「技術・家庭科」の「技術分野」の指導内容の変更である。

 これまでは、木工や金属加工、あるいはパソコンの基礎学習をやればよかったのだが、今回の改訂で「生物育成」、つまり「栽培」(または飼育)が必修になったのだ(もちろん男女とも)。

「栽培」という領域は、30年前までは必修だったのだが、その後はずっと「選択」領域、つまり「やってもやらなくてもよい授業」だった。だから、いま全国の中学校で「栽培」を選択し学んでいるのは、わずか5%にすぎないという。

 それが今度の改訂で「必修」になる。全国どの中学校でも、必ずやらなければならない授業になる。

 しかし、現実には、「栽培」が必修だといわれて、技術科の先生が困っている。教員養成の学生時代も含めて、栽培の経験がほとんどない。指導のノウハウもない。はたして教育効果があげられるものか、自信がない。

「栽培」は、この4月からどの中学校でも始めてよい。もし先生が躊躇していたら、地元の農家やJAなど農業関係者が後押ししたい。

 さらにもう一つ、中学校技術・家庭科では、「家庭分野」の内容も改訂され、「地域の食材を生かした調理、地域食文化の理解」が、「選択」から「必修」に変わった。

「栽培」して「調理」へ、「地域食文化」へつなぐのも、郷土食に詳しい、農家など「地域の先生」の出番なのだ。

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「深い学び」につながる工夫へ「現代農業」「食農教育」の活用を
 農家が応援する「教育ファーム」の栽培体験では、単にひとつのやり方を一方的に指導するのでなく、「実験たんぼ」や「ためし畑」をつくって子どもたちを「研究者」にする工夫も必要だ。

 たとえば、田んぼの品種くらべ。北海道の品種(ほしのゆめ、など)を少し植えてみる。感温性の品種だから、関東以南の暖地では「超極早生」に育ち、7月初めには穂を出し、花が咲く。夏休み前にイネの開花を見せたいときは、こんな工夫をしたい。

「実験たんぼ」や「ためし畑」を楽しく、豊かにすすめるうえで、農家がさまざまに工夫していることや知恵が頼りになる。たとえば、本誌今月号の特集「ありっ竹、使いきる」も、子どもたちの「ためし畑」に提案したいアイデアの宝庫だ。農家の工夫が詰まった『現代農業』は、「教育ファーム」の最良の情報源なのだ。ぜひ、中学校の技術科の先生に会ったときは、購読をすすめていだだきたい。

 一方、小学校の先生には、農文協発行の『食農教育』3月号・10周年特大号「学級園おもしろ栽培ハンドブック」がおすすめ。1学期からの栽培モデルと工夫を満載した1冊で、たとえばダイズの摘芯栽培でエダマメを多収する工夫や、乳酸菌パワーで野菜を元気に育てる小学校の取り組みも登場。これもためし畑で生育を比較すれば、子どもは畑に通いたくなる。トマトやサツマイモに始まってほとんどの作物や家畜を網羅した農文協の「そだててあそぼう」シリーズ(全85冊)も楽しい「教育ファーム」テキストだ。

「教育ファーム」推進にこめた農文協の思いは、子どもたち、先生たちに「農業・農家の応援団」になってもらい、ともに地域をつくること。読者諸氏も、ぜひ「教育ファーム推進」の国民運動に参加していただきたい。

(農文協論説委員会)


「教育ファーム」は何をめざすのか

 こうして各地で取り組まれる「教育ファーム」は何をめざすのか。農文協の思いも含めて整理してみたい。

(1)教育ファームは「食育」の場である。

「食べる」の前に、生命あるものを「育てる」仕事があることを伝えたい。
 人間(ひと)は食べものを育て、その食べものに育てられていることを伝えたい。
 言葉で教え込むのでなく、リアルに体で感じ、気付き、発見させること。そのための「本物体験の場」を提供することが「食育」の本道であろう。

(2)教育ファームは「体験学習」の場である。

 教育ファームは、生産者(農林漁業者)の指導を受けながら、作物を育てるところから食べるところまで、一貫して体験する機会を提供する取り組みである。
 この総合的な体験を通して、自然の力やそれを生かす知恵と工夫を学び、生産の苦労や喜び、食べものの大切さを、実感を持って知る。

(3)教育ファームは「気付き」の場である。

 見る・聞く・触る・嗅ぐ・味わう「五感」フル回転の「体験」を通して、3つのよさに気付かせたい。
〔1〕地域のよさ…人・風土・食文化など
〔2〕自然の力を生かす農業のよさ・面白さ
〔3〕自分のよさや可能性…やりとげた喜び
 この「気付き」が深いほど、意識と行動の変容・成長につながる。

(4)教育ファームは「変容・結びあい」の場である。

 子どもの未来を真ん中におく取り組みで、地域の結びあいを密にし、お互いが変わる。
 子どもが変わり、会話が増えて親(家庭)が変わる。家庭と地域の連携が深まって、地域・学校が変わる。
 体験にかかわる生産者(農家など)も変わる。やりがいが感じられて、暮らしに張り合いが増す。

 そしていま、小学校や中学校に、この教育ファームと志を共にする「追い風」が吹いている。

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応援したい、小中学校の「体験型学習」
 全国の小中学校で、この4月から、これまで以上に「体験型学習」が重視される。文部科学省の「学習指導要領」が改訂され、4月から「移行期」として、どんどん進めなさいという指示が出ているからだ。

◆「生活科」…継続的な飼育・栽培への改訂

 まずは、小学校1~2年生が、小学校入門期に学ぶ「生活科」の指導要領が改訂された。

 もともと「生活科」では、まずは学校になじませ、基本的学習・生活習慣を身につけるねらいで、直接体験を重視した学習活動を行なっている。

 栽培体験ではアサガオの鉢栽培などに取り組む学校が多いが、今度の改訂で、「継続的な飼育、栽培を行なうようにすること」の文言が新たに加えられた。生命に関する教育が重視されて、「生命の尊さを実感を通して学ぶ」観点から、短期的でなく、「継続的」な飼育・栽培体験をやりなさいという指導に変わったのである。

 アサガオだけでなく野菜の栽培もやらせたいし、1年生から2年生まで継続するムギやタマネギの栽培も面白い。そうなると畑の確保や栽培指導の面で、地元の農家や農業関係者の応援が必要になる。

◆「総合学習」…「地域学習」「生産活動」にシフト

 そして、3年生から始まる「総合的な学習の時間」。も「生きる力」を育むねらいで、平成10年の指導要領改訂で創設されたものだが、今回の改訂では、学習活動の内容として、「地域の人々の暮らし、伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題についての学習」が加わった。さらには「ものづくり、生産活動などの体験活動を積極的に取り入れること」にも配慮することが指導されている。

 今回の改訂で、「総合学習」は時間数が週3時間から2時間に削減される。その分、5~6年生で週1時間の「外国語活動」が新設された。「総合学習」の時間は減ったが、「地域学習」「生産活動」にシフトした取り組みが求められるから、ここでも地域に根ざした「教育ファーム」活動へ、農家・農業関係者の応援が歓迎されることになるだろう。

◆「栄養教諭」の地域連携型食育の推進

 さらなる「追い風」は、この四月から「学校給食法」が改定・施行されること。この改定のなかで、栄養教諭が中核となり学校・家庭・地域が連携して食育を推進すること、そのためにも「地場産給食」を推進すること、つまり、食材の地域自給と農業体験・食文化学習を結ぶことが求められているのである。今年4月からさらに増員される「栄養教諭」の応援も、農家・農業関係者の大事な課題である。

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「生物育成」で困っている中学校「技術科」の先生
 実は、今回の学習指導要領の改訂で、農家・農業関係者の立場から一番注目したいのは、中学校の「技術・家庭科」の「技術分野」の指導内容の変更である。

 これまでは、木工や金属加工、あるいはパソコンの基礎学習をやればよかったのだが、今回の改訂で「生物育成」、つまり「栽培」(または飼育)が必修になったのだ(もちろん男女とも)。

「栽培」という領域は、30年前までは必修だったのだが、その後はずっと「選択」領域、つまり「やってもやらなくてもよい授業」だった。だから、いま全国の中学校で「栽培」を選択し学んでいるのは、わずか5%にすぎないという。

 それが今度の改訂で「必修」になる。全国どの中学校でも、必ずやらなければならない授業になる。

 しかし、現実には、「栽培」が必修だといわれて、技術科の先生が困っている。教員養成の学生時代も含めて、栽培の経験がほとんどない。指導のノウハウもない。はたして教育効果があげられるものか、自信がない。

「栽培」は、この4月からどの中学校でも始めてよい。もし先生が躊躇していたら、地元の農家やJAなど農業関係者が後押ししたい。

 さらにもう一つ、中学校技術・家庭科では、「家庭分野」の内容も改訂され、「地域の食材を生かした調理、地域食文化の理解」が、「選択」から「必修」に変わった。

「栽培」して「調理」へ、「地域食文化」へつなぐのも、郷土食に詳しい、農家など「地域の先生」の出番なのだ。

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「深い学び」につながる工夫へ「現代農業」「食農教育」の活用を
 農家が応援する「教育ファーム」の栽培体験では、単にひとつのやり方を一方的に指導するのでなく、「実験たんぼ」や「ためし畑」をつくって子どもたちを「研究者」にする工夫も必要だ。

 たとえば、田んぼの品種くらべ。北海道の品種(ほしのゆめ、など)を少し植えてみる。感温性の品種だから、関東以南の暖地では「超極早生」に育ち、7月初めには穂を出し、花が咲く。夏休み前にイネの開花を見せたいときは、こんな工夫をしたい。

「実験たんぼ」や「ためし畑」を楽しく、豊かにすすめるうえで、農家がさまざまに工夫していることや知恵が頼りになる。たとえば、本誌今月号の特集「ありっ竹、使いきる」も、子どもたちの「ためし畑」に提案したいアイデアの宝庫だ。農家の工夫が詰まった『現代農業』は、「教育ファーム」の最良の情報源なのだ。ぜひ、中学校の技術科の先生に会ったときは、購読をすすめていだだきたい。

 一方、小学校の先生には、農文協発行の『食農教育』3月号・10周年特大号「学級園おもしろ栽培ハンドブック」がおすすめ。1学期からの栽培モデルと工夫を満載した1冊で、たとえばダイズの摘芯栽培でエダマメを多収する工夫や、乳酸菌パワーで野菜を元気に育てる小学校の取り組みも登場。これもためし畑で生育を比較すれば、子どもは畑に通いたくなる。トマトやサツマイモに始まってほとんどの作物や家畜を網羅した農文協の「そだててあそぼう」シリーズ(全85冊)も楽しい「教育ファーム」テキストだ。

「教育ファーム」推進にこめた農文協の思いは、子どもたち、先生たちに「農業・農家の応援団」になってもらい、ともに地域をつくること。読者諸氏も、ぜひ「教育ファーム推進」の国民運動に参加していただきたい。

(農文協論説委員会)