作者の皆さんの感想「文創りのエチュード」〜貼箱×放送作家〜

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全七話でお送りした「文創りのエチュード」〜貼箱×放送作家〜も、全編掲載が終わりました。
一番最初は、松尾さんの唐突な今回の企画提案にちょっと戸惑いましたが(笑)、今となっては関わっていただいた全ての方に感謝いたします。

類い稀なる指導者の元、素晴らしい文章力を秘める方々によって、「貼箱」がたくさんのこんな”物語”になるとは大変な驚きであり、そして何とも嬉しくもあります。

これも、この企画をご提案いただいた松尾成美さん、松尾さんが個人で主宰する文章教室の【奈良の学園前 アートサロン空】の生徒の皆さん、私と同じくこの企画に参加した和紙商小野商店河手さんのおかげです。

本当に、有り難うございました。

最後になりましたが、今回の作者のご感想も一緒に、掲載させて頂きます。

「文創りのエチュード」〜貼箱×放送作家〜
この企画の発案者。放送作家の松尾成美さん

≪松尾成美プロフィール≫
日本放送作家協会会員。1958年生れ、大阪市在住。
短大卒業後、出版社勤務を経て、結婚。その後、離婚し、娘二人を育てる。
いくつかの公募入選を経て、物書きの世界に入ったのは30代半ば。人脈を広げる事と、確実に仕事をこなし実績を上げる事で、ラジオ、舞台、テレビ、携帯サイトと活動の場を広げる。
大阪・京都・奈良・兵庫で“話すように書く文章講座” と銘打ち、オリジナルカリキュラムを展開し、公募入選者も出す。
柔らかな大阪弁の語りも講座好評の理由の一つ。
関西ライター名鑑正会員。

「トリビアな大阪弁」 http://naruchan.cocolog-nifty.com/blog/



〜第一話〜

<作 品・フィクション> 使用箱:トラベレター

暁(あかつき)の冒険者  島村 綾 (作品は、こちらです。)

<感 想> 空っぽの指定席

たくさんの箱を持ってきてこられて、机に並べられた時、正直「困ったなあ」と思いました。
テーマとなる箱の作者がいらっしゃる前で、作品を発表することは、いつもとは違う種類の重圧でした。箱についてこれほど考えたことも、人生で初めてです。
箱は好きです。奇麗な箱や、雑貨屋や服屋のかわいい紙袋などを「取っておく」ことは、母親譲りの習性としてよくやります。でも袋は再利用するのに、箱は あまり使うことなく、溜まるとかさばるため捨てていました。部屋には、収納しなければいけない小物が溢れているのですが、なぜか気軽に使えない。箱の存在 感というか、もったいない感でしょうか。
箱に入った物はなんでも高い物です。お菓子でも果物でも。袋に比べ、すでに形や容積が確定した箱は、入れる物を選ぶ気位の高さを感じて気後(きおく)れします。要するに、箱に入れてしまっておくほど希少で大切なものを、私が持っていないということでしょう。
空(から)の箱を見るたびに私は、「うつぼ」という言葉を思い出します。漢字では「空(そら)」と書くのですが、魚のウツボは、岩に空いた穴に棲んでい るからこの名になったとか。昔どこで聞いたかは忘れましたが、空(から)の状態というのは全くの無ではなく、すでに何かに満たされている、もしくは入る物 は決まっているのだ、という不思議な話が、妙に心に残っています。
空(から)の箱をどう使おうか考えている時は、旅行の計画を立てているような、浮き立つ気分です。いつかきっと、この箱に入れる価値のあるものが、私の 手元に来るはず、という根拠のない期待が、邪魔なのかもしれません。これからは使わずに捨てるよりは、ガラクタでもいいからしまっておこうかなと思いま す。



〜第二話〜

<作 品・フィクション> 使用箱:紺色のDVDケース

ハッピーボックス  西森郁代 (作品は、こちらです。)

<感 想> ボックス再生物語

村上さんのお話を聞き、色々な貼箱を見せて頂いた感想として、「知らなかった」という言葉が真っ先に浮かびます。では何を?と言うと、デザイン素材の豊富さはもちろん、ひとつひとつが手作業だという事、さらにその用途の多様さです。
教室の私たちが、手に取った箱の様々な用途には驚きました。そして、どんなにこだわった貼箱さえも、中身の品物を引き立たせる脇役なのだ・・・と思いました。
作り手の感性や愛情をかけている時は、しっかりと主役になっているが、製造されて中身が入った時は、主役から脇役になっている。
この事を強く感じました。しかし又、その一方で中身を取り出した後、その人の生活の中で大切にされ活かされたら、主役になるのだとも思います。
私が手に取った紺色のDVD入りの箱が、ジュエリーボックスになった様に・・・。
こんな風に中身を取り出した後、「この箱素敵、捨てないで残しておこう」
そうすると、本来の用途の役割の後、次の役割として生まれ変わる。そんな貼箱の再生物語は素敵ですね。教室の私たちの作品の様に、ひとつの箱の思いが、 ストーリーが、夢が生まれたのですから。再生物語を想像するだけで楽しいですね。そうなれば、職人冥利につきるかもしれません。
こんな再生物語がたくさん生まれる様に、願っています。



〜第三話〜

<作 品・フィクション> 使用箱:お洒落な「ウェディングスタンプ」ボックス

ワンダフル・トラベラー(不思議な旅人) 村瀬 朋子 (作品は、こちらです。)

<感 想> 勝負箱

“心で見なくちゃ、物事はよく見えないんだ”
フランスの小説家、サン・デクジュペリの「星の王子様」という物語の有名な一節だ。
村上紙器さんのパンフレットに、大きく書かれた“めざしたのは「感性品質」”という文字を見た時、私の心でパッと「星の王子様」の一節が浮かんだ。
パッケージ(貼箱)の企画と、手造り製造にこだわり、目に見えない何かを感じてもらえたら、という会社の心意気が伝わった。
私にとって箱は、中に入っている何かに到達するまでの、通過点に過ぎない存在だった。
素敵な箱だとしても、ほんの一瞬「わぁ!」と感動し、すぐ中身に目が移る。
しかし、村上さんの箱作りのお話を聞いて、箱にも一つ一つのドラマがある事を知った。
中身が引き立つ箱を作る為、イメージを膨らませ、試行錯誤し、手作業で仕上げていく。
出来上がった作品には、それぞれの思い入れがあるのだろう。作り手と消費側の感覚の違いに驚くと同時に、今まで箱を簡単に処分してきた私は、申し訳ない、とさえ思えてきた。
村上さんのお話では、箱を発注する業者の方は、箱の製造元が記載される事を嫌う、という事だった。それはもっともだ、と思う一方、箱を含めた全体が商品だとも言えるのではないだろうか。
箱にもちょっぴり自己主張があれば、目に留まり“何か”を感じる人が増えるのかも、と思った。消費者がついスルーしてしまう貼箱に、少しアクセント「オリジナルデザインロゴ」を入れるなど、製造元をさりげなくアピールしても、バチは当たらないと思う。
何故なら、その貼箱は“目に見えない感性”で勝負しているのだから。 



〜第四話〜

<作 品・フィクション> 使用箱:カーボンファイバーで作られた「マネークリップ」

黒太郎とプリンセスモモの父母の愛  伊東香代子 (作品は、こちらです。)

<感 想> 小箱からの夢のプレゼント

一ヶ月間ほど、お借りいたしました小さな黒の小箱から、色々な空想で楽しむ事が、出来ました。
深夜に、机の上に置きまして何度も触ってみつめておりました。
私の頭の中に「あくまで脇役」という言葉が浮かびました。それでは、私の作品の中で主役になって欲しいと思い書きました。
深夜に、小箱の心の声で「私を書いて」と言っているように、感じました。
日本人の丁寧な作りにも関心いたしました。
空想の世界で遊んでいますと、アメリカ留学十年目の長女がボストン美術館と美大の共催のドキュメンタリー部門で優秀賞を頂きました。
二年後の最優賞に選ばれましたら、彼女の作品をCD化して素敵な貼り箱を作って頂けたらと夢は、膨らみました。
貴社のホームページに、作品を載せて頂けるとは、有り難く感謝いたします。
残暑厳しい毎日です、くれぐれもご自愛くださいませ。



〜第五話〜

<作 品・フィクション> 使用箱:葉書入れ

秘密の小箱  児玉美津江 (作品は、こちらです。)

<感 想> 貼り箱のおもいで

六月の文章講座の日、見慣れない二人の男性が来られていました。
「どうぞ、適当に、皆の間に入ってください」と松尾先生に促されて二人は、生徒の間に入られました。私は最初、二人は、てっきり新しく入られた受講生だと ばかり思っていました。その後「貼箱」を作成される方と聞き、私達、受講生とのコラボ企画がきまったのです。「貼箱」について話される思いに、仕事にたい する深い愛情が、ひしひしと伝わってきます。私も以前から、奇麗な箱が大好きで、収納に困るほど溜まっています。
時々、贈り物の箱や包装には、無頓着な人がいますが、私には許されません。
だって、素敵な入れ物に入った時、主役たちは輝きだすのではないでしょうか・・・ その人に合った服装は、品性を感じます。それと同じで、お料理でもお皿によって随分美味しさが変わると思うのですが如何でしょうか?
「入れ物」それは箱であったり、服であったり、器であったり、家であったりもします。
主役を引き立てるための小道具にか過ぎないかもしれないこれらのわき役。されどわき役・・・ 貴方達のお陰で、私は光輝くのです。
今回の企画を通して、想いをこめて造られる一つ一つの貼り箱、私は今後、贈り物の箱を開ける度に、きっと、村上さんの「貼箱」に対する深い思いを、想い出す事でしょう。
「語りかける貼箱」を今後も造り続けてください。「オモチャは箱を飛び出して、踊るオモチャのチャッ・チャッ・チャッ」
有難うございました。



〜第六話〜

<作 品・エッセイ> 使用箱:剃刀ケース

人も物も、中身なのだが・・・  菅原哲夫 (作品は、こちらです。)

<感 想> もちょっと「角」がとれてもいいわけで・・・・・

「貼箱など、所詮商品の入れ物に過ぎず、中身こそが問題」と、前回声を大に言ってみたものの、後からよくよく考えてみるってえと、名のある陶磁器やガラス 製品など、たかが入れ物なのに、それだけで値打ちがあるらしく、中には、こちとらの目ん玉がポッコリ出るほどの値打ちが付くのさえ、多々あるってわけでし て・・・・・・。
でも言っちゃあ何だが、貼箱は紙で出来てる。陶磁器並には無理かと思ったら、紙で作った部屋の間仕切りに、趣のある絵をサラサラと描いちゃぁ、芸術作品とする「襖絵」なる物もあるわけで・・・・・・。
ならば貼箱だって、まっとうな器、いや立派な芸術作品として、世間様に認められないこともないだろうと・・・・・・。
そこで身の回りを、ふと見渡したら、気に入っている貼箱がひとつ。
そもそも、何が入ってたのか分かっちゃいないのだが、たまたま家人が持っていたのを取り込んで、書斎にポンと置いてみたところ、これでドンピシャ。作った奴の遊び心と洒落っ気を感じさせる、そんなユーモアとエスプリが、なんとも粋な感じでして・・・・・・。
その箱、一見すると、分厚い辞書に見えるところがミソで、本棚の隅っこにさりげなく、他の本と一緒に並べては、中にちょいと秘密の小物を入れたりして。何かこう、優雅な雰囲気が漂うのは、その丸っこい感じからなのか、なかなか味がありますな。
さて一方「村上紙器」さんの貼箱、いずれも角がピッシリ、直線がクッキリ、ハッキリ。真面目な緊張感がピリピリ漂ってますな。
なもんで、時には角の取れた、ホッコリ、ホンワカした貼箱があってもいいんじゃ、と思ったりしたってわけです。



〜第七話〜

<作 品・フィクション> 使用箱:ポートフォリオ写真集ボックス

マリッジブルー  森野妖精 (作品は、こちらです。)

<感 想> 中身が先か、箱が先か

実は、私はお菓子が入っていた空き箱が好きです。でもこれって、ちょっと恥ずかしいかもと、他人には内緒の趣味です。
特に思い入れの深い箱、すなわち、美味しい物が入っていた箱は、なかなか捨てられません。福島県 東京都 神奈川県 奈良県と、数回に渡る引越しにも関わらず、三十年以上も前になる、小学校時代のお気に入りの箱が今も残っています。
今回のコラボ企画で、村上さんの箱への思いをお聞きして、自分の密かな趣味も、ちょっと自慢できるかもと思っています。どうやら、私の子供の頃から潜在意識にあった、「美しいもの=箱も立派」という公式は、確かだと再認識しました。
中身に対する愛情が、中身を入れる箱にも同じように注がれるから、特別な箱への注文をされるのでしょう。
「特別な箱だから、大切な物を入れる」
中身を失った箱に私は、いつもその時々の大切な物を入れています。その小学校の時のお気に入りの箱には、私の小学校六年間の凝縮した思いでの品々が保管されています。
そんな子供時代を過ごして来たせいか、ラッピング屋等で空き箱を買うこともしばしば。衝動買いをしてしまい、お家に帰ってから、箱に入れる中身を考える。箱が素敵だから、中身もお気に入りの物を、と思うのです。
村上さんのHPで一目ぼれした「シューズ・ボックス」。東急ハンズやロフトに売っていたら、絶対、買っています。「箱が先で、中身が後」の作品には、当然、箱の内側に作り手の名前が印字されている。主役になれる箱もたくさんあったらいいのにと、箱好きな私は思います。



コラボ企画の初日。
松尾さんによる今回の「コラボ企画」の説明と、これから作品のネタに持って来た「貼箱」の説明。
皆さんも、興味津々!?

「文創りのエチュード」〜貼箱×放送作家〜「文創りのエチュード」〜貼箱×放送作家〜
「文創りのエチュード」〜貼箱×放送作家〜「文創りのエチュード」〜貼箱×放送作家〜



産経新聞大阪公式ニュースサイトで、記事が掲載されました。
コラボ企画で情報発信 モノつくり企業と文章講座受講生がHPで

産経新聞2010.9.3朝刊

★感性品質への「こだわり」オリジナルパッケージ(貼箱)企画・製造★

村上紙器工業所

手間をかけることは、「愛情」をかけること。
「愛情」をかけることが、私たちの仕事です。

感性品質とは、性能や効率だけではなく、「心地よい」「官能的」
「温もりがある」など、デザインや素材感を活かし、
人の”感性”に直接響く「魅力的品質」をいいます。

そんな”ゾクゾクするほどの美しさ”や”ワクワク感”のある貼箱を、
私たちはは作っていきたいと考えています。
そして、あなたの”名脇役”になりたい……。