第七話(最終話)。「文創りのエチュード」〜貼箱×放送作家〜

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8月31日から始まったコラボ企画「貼箱 × 放送作家」シリーズ最終の第七話。 舞台脚本、テレビの構成台本、小説など、幅広く活動されている松尾成美さんが主宰する文章教室の生徒さんに、「貼箱」をネタに「エッセイ」または「フィクション」を書いていただき、弊社サイト上に掲載するという企画です。

1日1話づつ、7人の方による計7話の連続掲載を致します。
文章教室【奈良の学園前 アートサロン空】の生徒の皆さんの力作を、どうぞご堪能ください。

宜しくお願い致します。



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※使用箱:ポートフォリオ写真集ボックス(詳細は、こちらをご覧ください。)

<フィクション>

マリッジブルー

森野 妖精

人の物を許可無く、勝手に見てしまうことは良くない。28歳、OL6年目の私が知らないわけがない。でも、手に取った箱をそのまま元にあった場所に返せなかった。

婚約者の剛の部屋に入るのは、これで三度目。婚約者ならば、もっと頻繁に相手の部屋へ行き来をしているかもしれない。私の恋愛経験が少なく、部屋へ押しかける口実作りがへたなようだ。
結婚式を一ヶ月後に控え、高校教師をしている剛が勤務中に倒れて、緊急入院をした。東北の田舎から上京し、近くに親類がいない剛に頼まれ、剛のマンションに荷物を取りに来たのだ。
整理されたクローゼットから衣類を取出し、本棚から頼まれた本を探す。推理小説の本が意外に多いことに驚きながら、仕事上の本を見つけた。ふと、その本の隣にあるA3程のグレーの箱が目に止まった。
「卒業アルバムかなぁ」
剛が無口のせいもあり、剛の学生時代の話を聞けずにいたこともあってか、誘惑は良識に簡単に勝ってしまった。
その箱を実際に手に取ってみると、箱本体とふたが繋がっていた。まるでコンパクトを開けるようにして、箱の中味に気を付けながら開けてみた。血の気が一瞬に引く。
私の画像を印刷したプリントが日付順にたくさん入っていた。しかもそれらは、通勤途中の後姿やベランダで洗濯物を干している時等、隠し撮りをされたものばかりだった。
「誰かに見られているような気がするの。いい女だからかなぁ」
3ヶ月位前、何となく相談した時の強張った剛の顔が思い出された。
グレーの箱を元に戻しながら、冷静に考えようとする。私の素行調査なのか、私を好き過ぎて、全てを知りたいと盗撮しているのか。確かに、私もこうして剛の 物を黙って見ておきながら、盗撮だけを悪いとは言えないはず。無口で誠実と思っていた剛が、無口で変態な剛だったら、結婚を止めた方がいいのかもしれな い。今ならまだ間に合う……。考えがまとまらないまま、足は病院へと私を運んだ。
病室に戻ると、剛に二人のいかつい男性が来客中だった。私に気付いた彼らは、刑事と名乗りながら、
「怖かったでしょう。婚約者のお蔭でストーカーを逮捕できましたよ。寝ずに犯人を突き止め証拠写真を撮るなんて、愛されていますね。でも、過労で倒れられてはダメですな」
刑事の話を聞きながら、あの箱の写真の何枚かが、一年以上前の日付だったことを思い出し、また血の気が引いていくのを感じた。

★感性品質への「こだわり」オリジナルパッケージ(貼箱)企画・製造★

村上紙器工業所

手間をかけることは、「愛情」をかけること。
「愛情」をかけることが、私たちの仕事です。

感性品質とは、性能や効率だけではなく、「心地よい」「官能的」
「温もりがある」など、デザインや素材感を活かし、
人の”感性”に直接響く「魅力的品質」をいいます。

そんな”ゾクゾクするほどの美しさ”や”ワクワク感”のある貼箱を、
私たちはは作っていきたいと考えています。
そして、あなたの”名脇役”になりたい……。