8月2日の数字:120万円のマーチ

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日産が、その代表車種の一つマーチを
日本ではなくタイで生産する。
この動きを、どう読むべきでしょうか?

ビジネスモデル
生産地の最適化


マーチといえば、日産を代表するクルマの一つである。初代マーチが発売されたときのことは、今でも記憶に残っている。Wikipediaを調べてみると、日本デビューは1982年だったらしい。デザインはジウジアーロ、それはなかなかにかっこいいクルマだった。

その後、10年を経てフルモデルチェンジされて登場した二代目マーチがまた、実にスタイリッシュ。さらに10年後、ゴーンさんの荒療治で立ち直った日産は、もう一度マーチにフルモデルチェンジを施した。個人的にはゴーンさんの日産が出すクルマのデザインは、いまいち好きになれないのだけれど、それはさておき。

マーチが日産を代表するクルマの一つであることは間違いない。トヨタでいえばカローラみたいなものだろう(正確に言うなら、カローラの対抗馬はサニーだったはずだけれど)。

そのマーチの日本生産を、日産はやめる。といってマーチを作らなくなるわけではない。依然としてマーチは、日産の顔の一つなのだ。顔ではあるが、だからといって日本で作らなければならないわけでもない。どこで作れば、もっとも利益率が高くなるのか。

経済合理性を追求した結果、マーチはタイで作られることになった。そして、タイで作ったマーチを日本に輸入する。それでも「労務費、調達コスト、物流費、関税、為替……。あらゆる要素をタイと比べても、安さが武器の小型車を日本で作るメリットが見えにくい(日経産業新聞2010年8月2日付1面)」

もし同じことをトヨタがカローラでやれば、どんな騒ぎになるか。トヨタではなく、ゴーンさんが社長をやっている日産だから「まあ、それぐらいのことはやるだろうな」的受け止め方をされているのだ。

しかし、トヨタだって本当は、例えばカローラを中国で作りたいのではないか。その方が、おそらくは利益率は高くなるはずだから。いま製造現場では明らかにパラダイムシフトが起こっている。このパラダイムシフトが3年先にはどのような影響を自社に及ぼすのか。シミュレーションは、今すぐにでも始めた方がよい。