第17回BMBインタビュー[item-s design]

item-s design

BMBでは、ID登録一桁台のitem-s design(アイテムズ・デザイン)代表、北條さん。
ブログ、SNS、twitterなど、最先端Webテクノロジーを、コミュニケーションツールとして駆使されています。プロダクトデザイナーとして企業のものづくりを支援する一方、伝統工芸品を中心とした商品デザイン、製品企画で産地振興にも携わっておられます。
今回は、デザイン講師として教鞭を執っておられる京都精華大学に北條さんを訪ね、お話をうかがいました。

北條さんは元々インハウスのデザイナーだったそうですが独立のきっかけは?

6年前に松下電工株式会社(現パナソニック電工)を退職しました。会社では主に住宅設備機器関係(トイレや洗面化粧台)など、高齢者対象のデザインを13年程手がけていました。
そのまま勤める道もありましたが、惰性でデザインをすることの危機感を感じて、プロダクトデザインの事務所を起こしました。ちょうど、自分で作って自分で売るデザイナー(デザイナーメーカー)が世間でも注目され出してきて、自分でもやってみたいという気持ちが後押ししました。

手始めはWebショップの運営だったそうですね。

仁清木賊湯呑そうです。Webショップ「item-s」を立ち上げて、デザイナーメーカーとして試験的に販売を開始しました。主に日常使いの和食器などを扱い、借金だけはしないことを目標に掲げ、自分の貯金の範囲内でいろいろと勉強してみようと・・・。
職人さんにお願いして、自分のデザインで作って、在庫も抱えて売ることを試験的に行いました。登り窯で作っているような益子焼はそこそこ売れたんですが、基本的にWebで食器は売れない。苦戦している窯元が多いということも分かってきて、今は休止状態です。
ただ、夢をあきらめたわけじゃなくて、今は京都の職人さんと一緒に伝統産業のデザインに取組んでいますし、もうちょっと長いスパンで考えて、デザイナーメーカーという夢の実現をして行きたいと思っています。


その京都での職人さんとの取組みを教えていただけますか。

京都伝統産業協働バンク(伝産バンク)という組織があります。京都の職人の優れた技術を活用して、新たなものづくりを行う仕組み(事業主体:財団法人京都産業21)なんですが、そこに参加して、染め職人の方2名と私で、ものづくりに取組んでいます。
この職人さんも元々は悉皆屋(しっかい屋:江戸時代、大坂で衣服・布帛の染色・染返しなどを請け負い、京都に送って調整させることを行とした者。転じて染物や洗張りをする店)の下で、図案-糊付け-染め-反物-仕立ての一連の工程の一部を担っていましたが、着物の販売が下落したため、このシステムが崩壊したそうです。そこで、職人自らお客さんとの接点を持ちたいという思いがあって、まず、インテリア雑貨の商品企画・開発を中心に、お互いリスクを持ち合ってものづくりを進めています。
伝産バンクは、府の補助は若干ありますが、基本的に職人の自主的な集まりです。主となる事業は、「伝統品のお直し」の取り次ぎで、京都試作センター株式会社を窓口に受付ています。

販売ルートも自分で探さないといけないんですか?

そうですね。ただ、京都産業21がプレスリリースなどは流してくれます。独自のアンテナショップなどはまだありませんが、販売してもらえそうなショップの目処は幾つか付けています。

伝統産業への取り組みとしては、越前和紙が最初ですね。

素の紙展ええ。最初は和紙を制作する組合側から「こんな技術があるから使えないか」と要望がありました。例えば、LEDを漉き込んだ和紙照明の開発の場合、こちらからスケッチやモデルを見せてこれで作れるかどうか?と投げかけて、漉き場さんからこれなら作れる、じゃあこうしましょう、、、という具合に、作り方のキャッチボールしながら進めたものです。
結果、発光ダイオードが漉き込まれていることが分かるようなデザインになりました。
同じく漉きの技術を使ってリボンを漉き込んだグリーティングカードも販売しています。リボンは、元々株券などの偽造防止に使われていた技術ですが、最近は需要が減ってきて、単価の高いグリーティングカードに応用した事例です。
昨年は東京新宿の「OZONE」で展示会をしましたが、今後は「見せる」から「売る」に注力して行きたいと思っています。商社のプライベート展示会の企画を進めていますが、商社で紙を売ってくれる人に和紙の魅力が伝わっていなかったので、展示の仕方も含めて情報のデザインを行っています。

北條さんの伝統産業への取組みのスタンスというのは?


越前和紙の取組みでもそうなんですが、職人さんというのは、自らデザインして・作って・売ってきた人たちですから、本来デザイナーでもあります。それを、外から来てデザインだけを置いていって、「これ作ってね」というような、単なる工場として扱う関係というのはお互いにとって良くないなと思っています。今、伝統工芸品というのは、売れなくなってきているのですが、それは、現代的な生活とのミスマッチング起きているんじゃないかと・・・。その辺のギャップを埋める為の、モノづくりのコーチ的な役割がデザイナーに求められていると思います。
当然職人さん達の方が、かたちについても作り方についてもよく知っていますので、こちらも技術を勉強させていただいて、デザイン提案する場合でも相談しながら進めています。

伝統産業での利益の配分(契約条件)というのはどのようになりますか。


京都での染め職人さん達との場合では、私が販売を担当し、卸しとしての取分も含めて、利益を等分しています。越前和紙の場合は、コンサルティング料として年間契約+ロイヤリティを組合と結んでいます。

BMB会員とのコラボも盛んですね。

ダンボール椅子このダンボールの椅子は、平成20年の御堂筋KAPPOのイベント(リュックサック展覧会)で展示したものです。建築家の吉永氏が中崎町のコモンカフェ用のテーブルを製作されており、これに併せて簡単に折りたためる椅子の展示をしないかという話があり、テーブルとのコラボで製作しました。北條さん
製作は矢野紙器株式会社にお願いし、設計の細かな調整も島津さんにも協力いただいて出来たものです。丈夫なダンボールですので原価が高くつき、商品化はされていませんが、勉強にもなって良かったなという感じです。


最後にBMBも含めてITの活用についてですが。

デメキン(Design Message from Kinki)デザインニュース」というタイトルで、ラジオ・ブログ的なpodcastを使った情報発信をしています。デザイナー発信・議論の場が少なかったので、デザインに関するニュースと、その解説を交えたユルいトークを仲間といっしょにお届けしています。これはしゃべったことをそのまま流せて、PCやiPodなどで聞けるので便利なツールです。
新しい技術はどんどん取り入れて実験してみたいほうなので、ブログは2004年正月から始めました。その後podcast、今はtwitterを始めています。twitterはカジュアルで、ブログはちゃんと見てくれている人向けに書いているといった使い分けでしょうか。ブログは、デザイナー系の人たちが、今現在どんなことを考えているのかなということを知るには参考となるツールではありますね。

ありがとうございました。益々の活躍を期待しています。