8月12日の数字:現場での1%カイゼンの威力

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たかが1%、されど1%。
現場の気持ちが1%カイゼンを目標にしてまとまるとき、
その効果はどうなるだろうか。

ネジ締めのコツを書いたイラストと練習用の道具。改善策を発表する掲示板には『懺悔の部屋』と書かれたプレート。最新鋭の設備を深化させる豆集団活動。

三菱電機がルームエアコンの生産現場で進めている「豆集団」活動の成果は、生産性改善率でみれば年間1%になるという(日経産業新聞2009年7月24日付5面)。1%の前に「たった」を付けるか、それとも後に「も」を付けるか。あなたなら、どう考えますか?

静岡工場に従業員は500人いるが、そのうち正社員は100人だけ。それでいて繁忙期には一日8000台がラインを流れていく。単純計算で一人当たり16台だ。これを正社員、期間従業員、アルバイトが入り交じった現場でこなしていく。

その現場での年間生産効率の1%カイゼンは、やはりすごいことではないのだろうか。もちろん生産効率の改善が直ちに利益率アップにつながるわけではない。それでも仮に毎年1%ずつ、生産効率が高まっていったらどうなるだろう。

つい先日の記事では松下の「コスト削減を狙うなら3%ではなく3割を狙え」というエピソードを紹介した。これはこれで目標設定と思考の枠組みを変える効果が確実にある。が、現場に一足飛びにそこまでのカイゼンを求めるのは難しい。

そこで出てきたのがおそらく1%だ。なぜなら目標が1%なら「やろうと思えば簡単にできる」と誰もが思うだろう。この気安さこそがポイントだ。それこそ今日入ってきたアルバイトだって「自分の効率を1%だけ上げてね」といわれれば「じゃ、どうしたらいいだろう」と考えることができる。それが1%という数字のマジックである。

何よりも取っつきやすさが、この「1%カイゼン」の決定的に重要なポイントだと思う。取っつきやすいということは、やってみようという前向きな気持ちを引き起こす。たった1%なんだからやってみようか、とみんなの気持ちが一つになったときのパワーがどれほどすごいものになるかは簡単に想像がつくはず。

「1%カイゼン」という言葉には、全従業員の気持ちを一つにまとめて前向きにする力があるのだ。おそらくはこのモチベーション転換こそが「1%カイゼン」を考え出した人の狙いに違いない。

「たかが1%」では決してなく、「1%も」と考えることのできる思考の柔軟性。これを学ぶべきだと思う。