教育・医療・介護に広がるアクアリウムの可能性その2

わたしたちの会社の近くには"空堀"と呼ばれる下町の風情がそのまま残っている地域があります。空堀は、古代難波宮以来の大阪の市街地である上町台地に位置していて、大阪の都心部では珍しく戦災を免れた地域なので、大阪の暮らしや姿を今に伝える路地や長屋が並んでいます。そしてこの"空堀"地域の高齢者の方々に直接お願いに回り、5人の方に快く"フグ飼育モニター"をしていただく事が出来ました。

 フグの種類は南米淡水フグです。水槽はお年寄りが扱いやすい17cmのキューブにしました。

南米淡水フグ

この淡水フグは水槽とともに差し上げる形ですが、ともかく1ケ月間は日記の形式で飼育した事によって毎日の生活がどのように感じるかなど書いていただくモニター形式を取らせていただきました。

フグ飼育モニター

お一人暮らしの方、ご子息のご家族と同居の方、ご夫婦のみの暮らしの方など5人の方に飼育していただき、すべての方がされた事ははじめにフグにハッピー、トラ、フク、ジュンなどという名前をつけられた事でした。単独飼いという部分と愛らしい顔をしているという事で始めからペットとして認めていただけたようです。

もうひとつの大きな収穫は、すべての方がコミュニケーションについて書いておられたという事です。お一人暮らしの場合は、食事をするテーブルの上に置いて話をしながら食事をしたり、日常の挨拶をするなど話し相手が出来たと書かれていたり、ご夫婦の場合は、フグを間にしてご夫婦の会話や友達との会話が増えたと書かれていました。ご子息のご家族ともフグの事で同じ話が出来るためお孫さんなどとのコミュニケーションが前よりも増えた事が分かりました。

身体的な事でも、毎日フグの事が気になるので、餌をあげる水を足すなど普段あまり動かない方でも店に来られてお話をするなど積極性が出るという事にも繋がっていたり、血圧が安定したという方もおられました。この血圧については、何か臨床例がないかと図書館で調べたところ、[文献]林 良博,1999,「検証アニマルセラピー(ペットで心とからだが癒せるか)」講談社の中に熱帯魚と血圧の関係についてという項目があり、1982年にペンシルバニア大学の精神病医、アーロン・H・キャッチャーが研究室に水生植物と小石と15〜20匹のありふれた熱帯魚を放った水槽を用意し、高血圧と正常血圧のグループが2分本を朗読・壁を見る20分、そして水槽を20分眺め、2分本を朗読し結果両グループとも熱帯魚を眺めた時に血圧レベルが下がり、高血圧レベルの平均血圧レベルが魚を見ている間に正常な範囲内に低下した事が発表されている事が分かり、フグ飼育と血圧の安定もある程度信憑性があると確信しました。